子宮頸がんワクチンの副作用について思うこと

 6月18日(土)に行われたオープンキャンパスで笑顔が印象的な車いすの女子高生と会いました。学部説明会を聞いた後、ご両親と一緒に「先生と語ろう」のコーナーに来てくれました。名前を書いてもらうため鉛筆を渡したところ自分用の補助具のついた鉛筆を出してゆっくりと書き始めました。お父様が静かな口調で「子宮頸がんワクチンによる障害なんですよ」とおっしゃったのを聞いて思わず「えええ」と声を上げてしまいました。もちろん、新聞やテレビのニュースで副作用のことは知ってはいましたが、目の当たりにすると呆然としてしまったのが正直な気持ちです。ご両親によると中学生の時に発症し、ようやく車いすでの生活ができるようになったけれどそれでも全身に痛みが相当あるとのこと。ちょうど前日の日経新聞夕刊に「子宮頸がんワクチン 勧奨中止3年 体の不調 夢阻む」という記事が社会面で取り上げられ、体の不調で今春の大学進学をあきらめた18歳の女性の話が出ていたばかりでした。

 

しかし、彼女は驚くほど明るく前向きで、入試や学生生活で心配なことなどを積極的に聞いてくれます。彼女には将来の夢があり、それを叶えるために恐らくご両親と一緒に大学を探して本学のオープンキャンパスに来てくれたのだと思います。こんなに明るく話してくれる裏側で本人もご両親もどんなに多くの涙を流してきたのだろうと思うと堪らない気持ちになりました。もし、入学ということになれば何とか夢の実現のために皆でサポートしていきたいと強く思いました。

 同時に思ったのは今後通学困難者に対して何かできないかということです。eラーニングや通信教育、様々な方法はありますが、通学とうまく組み合わせて学生生活の質を上げるにはどうしたら良いか。また、通学時のアクセシビリティなどなど。解決しなければ、考えなければならないことは非常に多いと感じます。

 

 

【子宮頸がんワクチンの動き】

子宮頸がんワクチンは2009年末に販売が始まり、134月より定期接種に。小6~高1を対象に積極的勧奨を行ってきたが不調の訴えが相次ぎ2か月あまりで勧奨を中止。厚労省によると1411月までに接種したのは約338万人で、約2600人に副作用が疑われる症状が出た。159月に厚労省が「因果関係は否定できない」としてワクチン接種者の救済認定を開始。これまでに約300件の申請があり、うち120件が認定。

 
日本経済新聞夕刊 2016年6月17日付 

 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10HAE_X10C16A6CC0000/

 ゼミの女子学生に聞いてみると、一人を除き全員接種していました。接種していない一人は姉が接種後不調を訴えたので怖くなって中止したとのこと。幸いお姉さんは軽症で今は元気に働いているそうです。彼らも他人ごとではなかったわけです。日経新聞によると、現在日本小児科学会など17の学術団体がワクチン接種の促進を求める動きがあるそうです。「これ以上の勧奨中止は、国内の女性がワクチンによるがん予防の恩恵を受けられないことになり、極めて憂慮すべき事態」としています。私はこのワクチンが世に出てきた時は夢の薬かと思いました。もし、自分が若ければ受けられたのにとさえ思いました。しかし、今思うと、治療のためならまだしも予防のためにリスクを冒す必要があるか疑問に思ってしまいます。原因特定がはっきりしないうちの積極的勧奨の再開は時期尚早なのではないかという気がします。